【初心者向け】相続のきほん なぜ今知っておくべき?準備ガイド
【初心者向け】相続のきほん なぜ今知っておくべき?準備ガイド
定年が近づき、ご自身の将来だけでなく、ご両親やご家族のことも考える機会が増えてきたという方もいらっしゃるのではないでしょうか。その中で、「相続」という言葉を聞く機会も増え、漠然とした不安を感じているかもしれません。
相続は、いつか誰にでも関わる可能性のあることです。しかし、「難しそう」「まだ早い」と感じて、具体的に何をすれば良いのか分からず、そのままにしてしまっているケースも少なくありません。
実は、相続について「きほん」を知っておくことは、将来の不安を減らし、いざという時に慌てずに対処するためにとても役立ちます。この記事では、相続の基本的な仕組みから、どのような流れで進むのか、そして今からできる準備について、初心者の方にも分かりやすく解説します。
相続とは何か? きほんのき
まず、「相続」とはどのようなことなのか、その基本的な仕組みから見ていきましょう。
相続とは、ある方(被相続人といいます)がお亡くなりになったときに、その方の財産や権利・義務を、特定の方(相続人といいます)が受け継ぐことです。
受け継がれる財産は、「相続財産」と呼ばれます。これには、預貯金や不動産、有価証券などのプラスの財産だけでなく、借金やローンなどのマイナスの財産も含まれます。
重要なポイント
- 被相続人: 亡くなった方
- 相続人: 財産を受け継ぐ方(法律で誰が相続人になるかが定められています)
- 相続財産: 受け継がれる財産(プラスもマイナスも含みます)
相続はどのような流れで進むのか?
相続が発生すると、手続きは一般的に以下のような流れで進んでいきます。
- 死亡の確認・届出: ご家族が亡くなったことを確認し、市区町村に死亡届を提出します。
- 遺言書の確認: 亡くなった方(被相続人)が遺言書を残しているか確認します。遺言書があれば、原則としてその内容に従って手続きを進めます。
- 相続人の調査・確定: 亡くなった方の戸籍謄本などを集めて、法律で定められた相続人が誰なのかを確定します。
- 相続財産の調査・評価: 亡くなった方がどのような財産(預貯金、不動産、株式、借金など)をどれくらい持っていたかを調べ、評価を行います。
- 遺産分割協議: 遺言書がない場合や、遺言書に記載されていない財産がある場合、相続人全員で「どの財産を誰がどれだけ受け継ぐか」を話し合います。これを遺産分割協議といいます。話し合いがまとまったら、遺産分割協議書を作成します。
- 相続の承認または放棄: 相続財産にはマイナスの財産も含まれるため、相続人は「相続を承認する(全ての財産を受け継ぐ)」か「相続を放棄する(一切の財産を受け継がない)」かを選択できます。放棄する場合は、原則として自己のために相続があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。
- 相続税の申告・納付: 相続した財産の合計額が一定額を超える場合、相続税がかかります。その場合は、原則として被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に税務署に申告・納付する必要があります。
- 相続財産の名義変更など: 不動産や預貯金などの名義を相続人に変更する手続きを行います。
これらの手続きには、それぞれ期限が設けられているものもあります。期限を過ぎてしまうと不利益を被る可能性もあるため、大まかな流れを把握しておくことが大切です。
知っておきたい「遺言書」のきほん
遺言書は、亡くなった方(被相続人)がご自身の財産を誰にどのように残すかを記したものです。遺言書があるかないかで、相続の手続きや、財産の分け方が大きく変わる可能性があります。
なぜ遺言書が重要なのでしょうか?
- 財産を特定の相手に渡せる: 法定相続人以外の方(お世話になった方など)に財産を渡したい場合や、相続人の中でも特定の相手に多く財産を残したい場合に、遺言書が必要です。
- 相続トラブルを防ぐ: 誰にどの財産を渡すかが明確になるため、相続人の間の話し合い(遺産分割協議)が不要になったり、揉め事を防いだりする効果が期待できます。
- 相続手続きがスムーズに進む: 遺言書の内容に従って手続きが進むため、遺産分割協議に時間がかからず、手続きを比較的スムーズに進められる場合があります。
遺言書の主な種類
主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。
- 自筆証書遺言: ご自身で全文、日付、氏名を書き、押印する遺言書です。手軽に作成できますが、形式不備で無効になったり、保管場所が分からなくなったり、偽造・変造のリスクがあったりします。相続開始後は家庭裁判所での検認手続きが必要になる場合があります(法務局で保管する場合は不要)。
- 公正証書遺言: 公証役場で、証人2人以上の立ち会いのもと、公証人に作成してもらう遺言書です。専門家が関与するため無効になりにくく、公証役場で保管されるため紛失や偽造の心配がありません。検認手続きも不要です。ただし、作成には費用がかかります。
ご自身の状況に合わせて、どのような遺言書が良いかを検討することができます。
「相続税」ってかかるの?きほんを知る
相続が発生した場合に気になるのが「相続税」です。相続した財産全てに税金がかかるわけではありません。
相続税がかかるのは、相続した財産の合計額から「基礎控除額」を差し引いた金額(これを「課税遺産総額」といいます)がある場合です。
基礎控除額の計算方法
基礎控除額は、「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)」で計算されます。
例えば、法定相続人が配偶者とお子さん2人の合計3人の場合、基礎控除額は「3,000万円 + (600万円 × 3人) = 3,000万円 + 1,800万円 = 4,800万円」となります。
つまり、相続財産の合計額がこの基礎控除額の範囲内であれば、原則として相続税はかかりませんし、税務署への申告も不要です。
相続財産が基礎控除額を超える場合は、相続税がかかる可能性があります。税額の計算は複雑な場合がありますので、正確な金額を知りたい場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
相続税の申告と納付は、原則として被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。この期限を過ぎると、ペナルティが課される場合がありますので注意が必要です。
今からできる「相続」の準備
相続は、ご自身が将来財産を残す立場になる可能性もあれば、ご両親やご家族の財産を相続する可能性もあります。どちらの立場であっても、事前に少し準備をしておくことで、いざという時にスムーズに進めたり、トラブルを避けたりすることができます。
1. ご自身の財産を「見える化」する
どのような財産(預貯金、不動産、株式、保険、借金など)がどれくらいあるのかをリストにしてみましょう。エンディングノートなどにまとめておくのも良い方法です。ご自身の財産状況を把握しておくことは、将来の計画を立てる上で非常に重要です。
2. ご家族と話し合うきっかけを作る
もし可能であれば、ご両親やご家族と、将来のこと(介護や終活、財産のことなど)について、少しずつでも話し合う機会を持つことも大切です。「相続」という言葉を出すのが難しければ、まずは「最近、終活に関心があって…」のように切り出してみるのも良いかもしれません。お互いの考えを知ることで、誤解を防ぎ、スムーズな話し合いにつながることがあります。
3. 遺言書の検討
ご自身が亡くなった後に、財産を誰にどのように渡したいか、希望があれば遺言書の作成を検討してみましょう。特に、法律で定められた相続人以外の方に財産を残したい場合や、特定の相続人に多くの財産を渡したい場合は、遺言書が必要です。
4. 専門家への相談を考える
相続は、法律や税金が関わる複雑な手続きが含まれます。分からないことが多い場合や、相続人が複数いて話し合いが難しい場合、相続税がかかりそうな場合などは、弁護士や税理士、司法書士などの専門家に相談することも考えてみましょう。専門家からアドバイスを受けることで、安心して手続きを進めることができます。
まとめ
相続は、多くの方にとって一生に一度あるかないかの出来事であり、不安を感じるのは自然なことです。しかし、「きほん」を知り、事前に少しずつ準備を進めておくことで、漠然とした不安を減らし、いざという時にも落ち着いて対応できるようになります。
この記事で解説した内容が、相続について考え始めるきっかけとなれば幸いです。まずはご自身の財産状況を整理したり、ご家族と将来について話し合ったりするなど、できることから始めてみましょう。より詳しい情報や具体的な手続きについては、必要に応じて専門家にご相談ください。