【初心者向け】老後資金づくりのキホン 資産の賢い「組み合わせ方」を学ぼう
老後資金の準備、どんな資産を組み合わせれば良い?
「老後資金を準備しないといけないのは分かっているけれど、何から手をつければ良いのか」「NISAやiDeCoは聞いたことがあるけれど、それだけで大丈夫なのかな?」
そんな漠然としたお金の不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。特に、定年後の生活を見据え始める50代の方にとって、今からどうやって資産を増やし、守っていくかは大きな関心事です。
資産運用と聞くと、難しそう、リスクが怖いと感じるかもしれません。しかし、いくつかの資産を上手に「組み合わせる」という基本的な考え方を知るだけで、不安を和らげ、より計画的に老後資金を準備できるようになります。
この記事では、老後資金づくりのために、なぜ資産の組み合わせが大切なのか、どんな資産があり、どのように組み合わせを考えれば良いのかを初心者向けに分かりやすく解説します。
なぜ資産を「組み合わせる」必要があるの?
資産の組み合わせを考える上で、よく引き合いに出されるのが「卵は一つのカゴに盛るな」という言葉です。これは、もし一つのカゴを落としてしまったら、全ての卵が割れてしまう可能性がある、つまり一つの資産に集中して投資すると、その資産の価値が大きく下がったときに、全体の資産も大きく減ってしまうリスクがあることを教えてくれる例え話です。
そこで大切になるのが、複数の種類の資産に分けてお金を預けたり、投資したりすることです。このように資産を組み合わせることを、専門的には「ポートフォリオを作る」と言います。
資産を組み合わせる主な目的は二つあります。
- リスクを抑える: 異なる種類の資産は、値動きの傾向が違うことが多いです。例えば、株式が下がるときに債券は比較的安定している、といったケースです。いくつかの資産を組み合わせることで、どれか一つの資産の価値が大きく下がっても、他の資産がその影響を和らげてくれる効果が期待できます。これにより、資産全体が急激に減ってしまうリスクを抑えることができます。
- 目標に合わせたバランスを作る: 資産には、リスクが高いけれど大きく増える可能性のあるもの(例: 株式)や、リスクは低いけれど増え方も緩やかなもの(例: 預金、債券)など、様々な特徴があります。これらの資産を自分の目標(いつまでにいくら必要か)や、どれくらいリスクを取れるか(リスク許容度)に合わせて組み合わせることで、自分にとって無理のない範囲で資産を増やしていくバランスを作ることができます。
どんな資産を組み合わせられるの?代表的な資産の種類
資産を組み合わせるといっても、具体的にどんなものがあるのでしょうか。ここでは、老後資金準備で考えられる代表的な資産の種類とその特徴をご紹介します。
- 預金(普通預金、定期預金など):
- 特徴:元本割れのリスクはほぼなく、非常に安全性が高いです。必要な時にいつでも引き出せる流動性も高いです。
- デメリット:金利が低いため、大きく増やすことは期待できません。物価が上がる(インフレ)と、実質的な価値が目減りしてしまうことがあります。
- 債券:
- 特徴:国や企業にお金を貸し、その利子を受け取ったり、満期時に返済を受けたりするものです。預金よりは金利が高いことが多く、一般的に株式よりは価格変動リスクが低いとされています。
- デメリット:発行元が経営破綻するなどして返済できなくなるリスク(信用リスク)や、市場の金利変動で価格が上下するリスクがあります。
- 株式:
- 特徴:企業の所有権の一部を購入するものです。企業の業績が良くなると株価が上がったり、配当金を受け取れたりする可能性があります。預金や債券よりも、大きく資産を増やせる可能性があります。
- デメリット:企業の業績悪化や市場全体の変動により、株価が大きく下がるリスクがあります。投資したお金が戻ってこなくなる(元本割れ)可能性もあります。
- 投資信託:
- 特徴:多くの投資家から集めたお金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券、不動産など、様々な資産に投資・運用する商品です。少額から始めやすく、自分一人では難しい分散投資を簡単に行えるのが大きなメリットです。
- デメリット:運用成果は市場の動きによって変動するため、元本割れのリスクがあります。また、運用を専門家に任せるための手数料(信託報酬など)がかかります。
この他にも、不動産や商品(金など)といった資産もありますが、まずは預金、債券、株式、そしてこれらを組み合わせてプロが運用する投資信託といった、比較的馴染みやすいものから理解を深めるのが良いでしょう。
自分に合った「組み合わせ」の考え方
これらの資産をどう組み合わせれば良いのでしょうか? 実は、「これが正解」という万人に共通する組み合わせはありません。なぜなら、必要な老後資金の額や、準備を始める年齢、退職までの期間、そしてあなたがどれくらいリスクを取れるか(リスク許容度)は、一人ひとり違うからです。
一般的には、以下のような考え方があります。
- 年齢や目標までの期間: 若いうちは、目標達成までの期間が長いため、一時的に価値が下がっても回復する時間を十分に取れます。そのため、リスクをやや高めに取れる株式などの比率を多くする考え方があります。一方、定年が近づいてきて、運用できる期間が短くなるにつれて、資産が大きく減るリスクを抑えるために、債券など比較的安定した資産の比率を増やしていくのが一般的です。
- リスク許容度: 「もし投資したお金が半分になってしまったら、夜も眠れなくなる」という方もいれば、「ある程度減っても仕方ない、増える可能性に期待したい」という方もいます。これがリスク許容度です。自分の性格や、生活に必要なお金とは別にどれだけ余裕資金を運用に回せるかで、リスク許容度は変わります。リスク許容度が高い人は株式などの比率を多めに、低い人は預金や債券、またはバランス型の投資信託を中心に考えるのが良いでしょう。
例えば、
- 安定重視型: 預金や個人向け国債(債券の一種)を中心に、一部を安定性の高いバランス型投資信託に。
- バランス型: 株式と債券、国内外の資産をバランス良く組み合わせた投資信託を主体に。
- 成長期待型: 株式投資信託の比率を多めに。
といったように、様々な組み合わせが考えられます。
NISAやiDeCoといった制度を利用する場合も、その中でどんな投資信託を選ぶか、複数の投資信託を組み合わせるか、といった形で、資産の組み合わせ(ポートフォリオ)を意識することが可能です。
組み合わせた後は、定期的に見直しましょう
一度資産の組み合わせを決めたら、それで終わりではありません。時間の経過や市場の動きによって、最初に決めた資産ごとの割合が崩れてくることがあります。例えば、株式市場が好調で株式の価値が大きく増えると、資産全体に占める株式の割合が高くなり、当初想定していたよりもリスクの高い組み合わせになってしまう、といったケースです。
また、ご自身の年齢が上がったり、ライフステージが変わったり(例:退職が近づく、子供が独立するなど)することでも、適切なリスク許容度や目標までの期間が変わってきます。
そのため、年に1回など定期的に、資産の組み合わせが最初に決めた割合から大きくずれていないか、そしてご自身の状況に合っているかを見直すことが大切です。必要に応じて、割合が大きく増えた資産の一部を売却して、割合が減った資産を買い増すなどして、元のバランスに戻す「リバランス」を行うことも検討しましょう。
まとめ:あなただけの「組み合わせ」を見つける第一歩を踏み出そう
老後資金の準備において、資産を上手に「組み合わせる」ことは、リスクを抑えながら計画的に資産を増やしていくための大切な考え方です。
まずは、 * ご自身の老後資金の目標額と、それまでの期間 * あなたがどれくらいのリスクなら受け入れられるか(リスク許容度)
を考えてみましょう。それが、あなたにとって最適な資産の組み合わせを考える第一歩になります。
資産運用は、早く始めるほど「時間」を味方につけられます。少額からでも良いので、まずは資産の組み合わせ方を意識して、無理のない範囲で始めてみることが大切です。
もし、自分で考えるのが難しい、もっと詳しく知りたいと感じたら、ファイナンシャル・プランナーのような専門家や、金融機関の相談窓口に相談してみるのも良いでしょう。専門家は、あなたの状況に合わせて具体的なアドバイスをしてくれます。
あなた自身の状況に合った資産の組み合わせを見つけて、安心して老後を迎えられるように、今日から一歩を踏み出してみませんか。