【初心者向け】定年後、年金だけで足りる?収入の柱を増やす方法
定年後の生活資金について、「年金だけで十分なのだろうか?」と漠然とした不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。公的年金制度があるとはいえ、現役時代と同じ水準の生活を維持するには、年金だけでは足りないという話を耳にすることも多いかと思います。
この記事では、定年後の生活資金を確保するために、年金以外のどのような収入源が考えられるのか、そしてご自身の状況に合わせてどのように収入の柱を増やしていくかを考えるヒントをご紹介します。
定年後の生活資金と年金だけでは足りない可能性
総務省の家計調査報告(2022年)によると、夫婦二人の無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上)の平均的な1ヶ月の支出は約26万円とされています。これに対して、公的年金の平均的な受給額は、厚生年金と国民年金を合わせて夫婦で月に約22万円程度(2022年度末時点)というデータがあります。
これらの平均値だけを見ても、毎月数万円の赤字が発生し、貯蓄を取り崩しながら生活していく必要があることが分かります。もちろん、必要な生活費は個々のライフスタイルによって大きく異なりますし、受け取れる年金額も現役時代の働き方によって変わります。しかし、「年金だけでは不足する可能性がある」という前提で、対策を考えておくことが大切です。
定年後の主な収入源の種類
年金以外の収入源としては、主に以下のようなものが考えられます。ご自身の状況や希望に合わせて、どのような選択肢があるかを見ていきましょう。
1. 働くことによる収入
定年後も働くことを選ぶ方は少なくありません。働き方には様々な形があります。
- 再雇用・継続雇用: これまで勤めていた会社にそのまま、あるいは契約社員などの形で引き続き雇用される方法です。環境の変化が少なく、これまでの経験やスキルを活かしやすいというメリットがあります。ただし、給与水準は現役時代より下がることが一般的です。
- パート・アルバイト: 時間や日数を選びやすく、比較的柔軟に働くことができます。体力や興味に合わせて、様々な仕事があります。
- フリーランス・起業: これまでの専門知識やスキルを活かして独立したり、新しい事業を始めたりする方法です。収入に上限はありませんが、安定しない可能性や準備・努力が必要になります。
- シルバー人材センターなどを利用した働き方: 地域によっては、高齢者向けの仕事紹介や派遣サービスがあります。短時間・短期間の仕事が多い傾向があります。
働くことのメリットは、収入を得られるだけでなく、社会との繋がりを保てることや、生活にメリハリが生まれることなどが挙げられます。
2. 資産運用からの収入
資産運用によって、お金がお金を生み出す仕組みを作ることも、定年後の収入源となります。
- 配当金・分配金: 株式や投資信託を持っていると、企業が得た利益の一部(配当金)や運用で得た収益(分配金)を受け取れることがあります。これは、定期的な収入(インカムゲインと呼ばれます)になり得ます。
- 家賃収入: 不動産(賃貸物件)を所有していれば、入居者から家賃収入を得られます。まとまった資金が必要になることや、管理の手間、空室リスクなどがあります。
- 預貯金や債券の利息: 金利が低い状況では大きな収入にはなりにくいですが、元本が比較的安全とされる方法です。
- その他: iDeCoやつみたてNISAなどで積み立てた資産を、定年後に少しずつ取り崩して生活費に充てることも、広義では資産運用からの収入と言えます。ただし、これらは積み立てた元本を切り崩す側面が強いです。
資産運用は、ご自身の資産に働いてもらうという考え方です。ただし、元本保証ではないものが多く、リスクが伴う点を理解しておく必要があります。
3. 私的年金・企業年金
公的な年金制度(国民年金、厚生年金)とは別に、ご自身で準備した年金や、会社が従業員のために用意している年金も、定年後の収入源となります。
- 個人年金保険: 保険会社と契約し、毎月または毎年保険料を払い込み、将来、一定期間または一生涯にわたって年金として受け取る仕組みです。
- iDeCo(個人型確定拠出年金): ご自身で掛け金を拠出し、運用方法を選んで将来の年金を作る制度です。税制上の優遇措置が多くあります。
- 企業年金: 会社が従業員のために準備する退職金・年金制度です。確定給付企業年金(DB)や確定拠出年金(DC)など、いくつかの種類があります。勤務していた会社にどのような制度があったか、確認しておきましょう。
これらの私的年金や企業年金は、現役時代からの計画的な準備が必要になります。
4. 退職金の活用
退職金は一時金として受け取るのが一般的ですが、これをそのまま預貯金として置いておくだけでなく、計画的に活用することも考えられます。例えば、退職金の一部を、前述したような資産運用に充てて、そこからの収益を収入源にするなどの方法があります。ただし、退職金は老後のまとまった資金として非常に重要ですので、取り崩し方や運用については慎重に検討する必要があります。
自分に合った収入源の見つけ方・考え方
どのような収入源を選ぶかは、ご自身の状況や価値観によって異なります。以下の点を考慮して、ご自身に合った方法を考えてみましょう。
- 何を重視するか?: 安定した収入を重視するのか、それとも働くことによるやりがいや社会参加を重視するのか。リスクを取ってでも積極的に資産を増やしたいのか、それとも安全性を最優先するのかなど、ご自身の優先順位を明確にしましょう。
- 現在のスキルや経験: これまで培ってきた経験やスキルは、働く上でも資産運用(例えば、特定の業界知識を活かすなど)を考える上でも役立ちます。どのような能力を活かせるか考えてみましょう。
- 健康状態と体力: 定年後の健康状態は、働けるかどうかに大きく影響します。無理のない範囲で継続できる方法を選びましょう。
- 必要な資金とリスク許容度: 定年後の生活で具体的にいくら必要なのか、そしてどの程度のリスクであれば受け入れられるのかを考えましょう。資産運用から収入を得る場合は、リスクとリターンは表裏一体であることを理解しておく必要があります。
- 複数の収入源を持つことのメリット: 一つの収入源に頼るのではなく、複数の収入源を持つことは、万が一の際のリスクを分散することにつながります。例えば、「公的年金+働くことによる収入+資産運用からの収入の一部」といったように、組み合わせを検討することも有効です。
収入源を増やすための準備・行動
定年後の収入源を確保するためには、今からできる準備や行動があります。
- まずは現状把握: ご自身の年金見込み額を確認したり、現在の支出を見直したりして、定年後に必要となるであろう資金について具体的に考えてみましょう。
- 情報収集: 働く選択肢、資産運用の方法、私的年金制度などについて、積極的に情報を集めましょう。書籍やウェブサイト、自治体や金融機関が開催するセミナーなども参考になります。
- スキルアップや準備: 新しい働き方を考えるなら、必要なスキル習得や資格取得などを検討するのも良いでしょう。
- 資産運用の検討と開始: 無理のない範囲で、積立投資などを始めてみることも有効です。少額から始められるものもありますので、内容をよく理解した上で検討してみてください。
- 専門家への相談: ご自身の状況に合わせて、ファイナンシャルプランナー(FP)などのお金の専門家に相談してみるのも一つの方法です。客観的な視点からアドバイスをもらうことができます。
まとめ
定年後の生活資金について不安を感じることは、決して特別なことではありません。公的年金に加えて、ご自身の状況に合わせた「収入の柱」をいくつか持つことで、より安心してセカンドライフを送ることができるかもしれません。
働くこと、資産運用、私的年金など、様々な選択肢があります。ご自身の価値観や体力、スキル、そして将来設計に合わせて、どのような方法が合っているのかをじっくりと検討することが大切です。
今から情報収集を始め、具体的な計画を立てることで、定年後のお金の不安を少しずつ解消していくことができるでしょう。この記事が、そのための第一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。