【初心者向け】万が一働けなくなったら?病気や怪我で収入が減った時のお金の備え方
働けなくなる不安に備えるための基本
50代になり、仕事やこれからの生活について考える中で、ふと「もし病気や怪我で働けなくなってしまったらどうしよう?」という不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。
健康には自信があっても、予期せぬ出来事は誰にでも起こり得ます。もし収入が途絶えてしまったら、生活費や医療費など、お金の心配が尽きなくなってしまいます。
この記事では、万が一働けなくなった場合にどのような公的なサポートがあるのか、そしてご自身でどのような備えができるのかについて、初心者の方にも分かりやすく解説します。漠然とした不安を具体的な知識に変えて、安心して過ごせるように準備を始めましょう。
働けなくなった時に考えられるリスクと必要なお金
病気や怪我によって長期にわたり働けなくなった場合、主に以下のようなお金の課題が生じる可能性があります。
- 収入の減少または途絶: 会社を休職したり退職したりすることで、給料が入らなくなります。
- 医療費の負担: 治療費や入院費、通院費などがかかります。
- 生活費の継続: 食費、家賃(住宅ローン)、光熱費、通信費など、毎日の生活にかかるお金は働き続けられなくても発生します。
これらのリスクに備えるためには、「公的な制度でカバーされる部分はどれくらいか」「自分でどのくらい備えておく必要があるか」を知ることが大切です。
万が一に役立つ公的なサポートを知ろう
日本には、働けなくなった人や病気・怪我をした人を支えるための公的な制度があります。これらの制度を理解しておくことは、備えを考える上で非常に重要です。
1. 健康保険の「傷病手当金」
会社員の方が加入している健康保険には、「傷病手当金」という制度があります。これは、業務外の病気や怪我で仕事を休み、十分な給与が受けられない場合に、生活を保障するために支給されるお金です。
- 対象者: 会社員など、健康保険の被保険者であること。
- 支給条件:
- 業務外の病気や怪我であること。
- 仕事に就くことができない状態であると医師が判断したこと。
- 連続する3日間(待期期間)を含む4日以上仕事を休んだこと。
- 休業した期間について給与の支払いがない、または減額されたこと。
- 支給期間: 支給を開始した日から最長1年6ヶ月です。
- 支給額: 概ね、給与の約3分の2程度です。
傷病手当金は、比較的短期間から中期的な休業に対するセーフティネットとなります。ただし、自営業の方などが加入する国民健康保険には原則として傷病手当金の制度はありませんので注意が必要です。
2. 公的年金の「障害年金」
病気や怪我によって、生活や仕事に著しい制限を受ける「障害状態」になった場合に支給されるのが「障害年金」です。これは現役世代でも受け取れる可能性があります。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があります。
- 障害基礎年金: 国民年金に加入している(または過去に加入していた)方が対象です。障害の程度に応じて1級または2級に認定されると支給されます。
- 障害厚生年金: 厚生年金に加入している間に初診日がある病気や怪我で障害状態になった方が対象です。障害の程度に応じて1級、2級、または3級に認定されると支給されます。障害基礎年金の上乗せとして支給されるイメージです。
障害年金は、病気や怪我の「初診日」にどの年金制度に加入していたか、保険料をしっかり納めていたかなどが重要なポイントになります。また、障害の認定には基準があり、申請手続きも必要です。
3. 医療費負担を軽減する「高額療養費制度」
病気や怪我で医療機関にかかった際に、医療費の自己負担額が1ヶ月(同じ月内)で上限額を超えた場合、超えた分の払い戻しを受けられるのが「高額療養費制度」です。
この制度により、万が一高額な医療費がかかったとしても、自己負担には上限があるため、医療費の心配が大きく軽減されます。上限額は、年齢や所得によって異なります。
個人でできるお金の備え
公的な制度は心強い味方ですが、それで全てがカバーできるわけではありません。公的な制度で足りない部分や、より手厚く備えたい部分については、個人で準備をしておくことが考えられます。
1. 生活防衛資金の準備
病気や怪我に限らず、失業など予期せぬ収入減に備えるために、当面の生活費をすぐに引き出せる預貯金として準備しておくことが推奨されます。これを「生活防衛資金」と呼びます。
- 目安: 一般的に、生活費の3ヶ月〜1年分程度が目安とされます。ご自身の生活スタイルや家族構成、会社の福利厚生などを考慮して決めると良いでしょう。
- 置き場所: 普通預金やいつでも引き出せる定期預金など、流動性の高い場所に置いておくことが大切です。
生活防衛資金があれば、傷病手当金や障害年金が支給されるまでの間や、これらの給付だけでは足りない部分をカバーできます。
2. 民間保険の活用
公的な保障だけでは不安な場合、民間の保険で備えることを検討できます。様々な種類の保険がありますが、働けなくなるリスクに関係するものとしては以下のようなものがあります。
- 医療保険: 入院や手術をした場合に給付金が受け取れる保険です。公的な高額療養費制度がありますが、差額ベッド代や先進医療費、交通費、食事代など、健康保険適用外の費用も発生する可能性があるため、その備えとして検討されます。
- がん保険: がんと診断された場合や、がんの治療のために入院・通院・手術をした場合に特化した保険です。がん治療は長期に及ぶ場合があり、経済的負担も大きくなる可能性があるため、がんに対する不安が大きい場合に検討されます。
- 就業不能保険・所得補償保険: 病気や怪我で長期間働けなくなった場合に、代わりに収入の一部を補填してくれる保険です。傷病手当金の支給期間が終わった後や、傷病手当金が支給されない自営業の方などが検討することがあります。公的な障害年金の支給までには時間がかかる場合や、年金額だけでは不足する場合の備えとしても役立ちます。
民間保険を検討する際は、ご自身の年齢、家族構成、現在の健康状態、そして公的な保障でどこまでカバーされるのかを理解した上で、「何のために」「いくら」備えたいのかを明確にすることが重要です。すでに加入している保険がある場合は、保障内容を確認し、必要に応じて見直しを行うことも大切です。
今の保障状況を確認してみよう
まず、ご自身が今どのような保障に入っているのかを確認することから始めましょう。
- 会社の福利厚生: 会社によっては、病気や怪我で休職した場合の給与補填制度などがある場合があります。会社の担当部署に確認してみましょう。
- 加入している生命保険・医療保険など: 保険証券を確認し、どのような場合にどれくらいの給付金が受け取れるのかを把握しましょう。内容が不明な場合は、保険会社や保険代理店に問い合わせて説明を受けると良いでしょう。
- ねんきんネット: 自身の年金加入記録や、万が一の場合の障害年金の見込み額などを確認できます。
現状を把握することで、何が足りないのか、どのような備えが必要なのかが見えてきます。
まとめ:不安を具体的なステップに
病気や怪我で働けなくなることへの不安は、誰にでも起こり得る自然なものです。しかし、公的な制度があること、そしてご自身でも備えができることを知れば、その不安を和らげることができます。
まずは、この記事でご紹介した公的なサポート(傷病手当金、障害年金、高額療養費制度)の概要を理解しましょう。そして、ご自身の今の状況(会社の福利厚生、加入保険)を確認することから始めてみてください。
その上で、もしもの時に必要になりそうなお金と、現状の保障でカバーできる部分、そして足りない部分を把握し、生活防衛資金の準備や民間保険の検討など、無理のない範囲で具体的な備えを始めていくことが大切です。
お金の備えは、単にお金を貯めることだけではありません。万が一の時に、ご自身やご家族が安心して治療に専念したり、生活を維持したりするための「心のゆとり」を作るための準備でもあります。焦らず、ご自身のペースで、着実に進めていきましょう。