【初心者向け】お金と税金の基本 会社員が知っておくべき控除の仕組み
「給料明細を見ると税金がたくさん引かれていて、よく分からない」「年末調整って何をやってるの?」「もっと手取りを増やす方法はないの?」
会社員として働いていると、毎月の給料から自動的に税金が引かれています。年末には会社で年末調整という手続きをしますが、「言われるがままに書類を出しているだけ」という方も少なくないかもしれません。
税金は複雑に感じられますが、基本的な仕組みを知ることは、自分のお金を守り、計画的に資産形成を進める上でとても大切です。この記事では、お金と税金の基本的な関係や、会社員の方が特に知っておきたい「所得控除」の仕組みについて、初心者向けに分かりやすく解説します。
お金と税金は切っても切れない関係
私たちが納める税金は、国や地方自治体のサービス(医療、教育、公共事業など)を支えるために使われています。税金には様々な種類がありますが、会社員の方にとって最も身近なのは、給料から差し引かれる「所得税」や「住民税」でしょう。
これらの税金は、私たちの「所得」に対してかかります。「所得」というのは、収入から必要経費などを差し引いた金額のことです。会社員の場合、給料という「収入」がありますが、税金を計算する上では、この収入から一定の計算で導かれる「給与所得控除」などを差し引いて「給与所得」を計算します。
所得税の基本を知ろう
所得税は、個人の1年間の所得に対してかかる税金です。所得が多ければ多いほど税率が高くなる「累進課税」という仕組みがとられています。
所得税の金額は、基本的には以下の流れで計算されます。
- 1年間の収入を計算する(例:1年間の給料やボーナスの合計)
- 収入から必要経費や給与所得控除などを差し引いて所得を計算する
- 所得から次に説明する所得控除を差し引いて課税所得を計算する
- 課税所得に税率をかけて所得税額を計算する
- そこから税額控除を差し引く(住宅ローン控除など)
このように、所得税額を決める上で「所得控除」が重要な役割を果たしていることが分かります。
「所得控除」で税金が安くなる仕組み
所得控除とは、特定の条件に当てはまる場合に、所得から一定の金額を差し引くことができる制度です。所得控除が適用されると、税金がかかる対象となる「課税所得」の金額が小さくなります。
例えば、所得が500万円の人と、同じ所得でも所得控除が100万円適用される人では、税金のかかる「課税所得」の金額が変わってきます。
- 所得500万円、所得控除なしの場合 → 課税所得500万円
- 所得500万円、所得控除100万円の場合 → 課税所得400万円
このように、所得控除が多いほど課税所得が減り、結果として納める所得税や住民税の金額が安くなるという仕組みです。
会社員に関係しやすい主な所得控除
所得控除には様々な種類がありますが、会社員の方が特に関係しやすい主なものをいくつかご紹介します。
- 給与所得控除: 会社員の「必要経費」として収入から差し引かれるみなし経費です。収入金額に応じて金額が決まっています。特に手続きは不要で、会社が計算してくれます。
- 基礎控除: すべての納税者に適用される控除です。合計所得金額に応じて控除額が決まっています。
- 社会保険料控除: 健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料など、自分で払ったり給料から天引きされたりした社会保険料の全額が控除の対象になります。
- 生命保険料控除: 支払った生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料に応じて一定額が控除されます。
- 地震保険料控除: 支払った地震保険料に応じて一定額が控除されます。
- 医療費控除: 1年間に支払った医療費が一定額(一般的に10万円、または所得の5%のどちらか低い方)を超えた場合に、超えた分の金額(上限あり)を控除できます。生計を一つにする家族の医療費も合算できます。
- 扶養控除: 16歳以上の扶養親族がいる場合に受けられる控除です。扶養親族の年齢や同居の有無などで控除額が変わります。
- 配偶者控除・配偶者特別控除: 要件を満たす配偶者がいる場合に受けられる控除です。配偶者の所得金額によって控除額が決まります。
これらの他にも控除はありますが、まずはご自身に関係しそうなものから確認してみるのが良いでしょう。
年末調整の役割
会社員の場合、毎月の給料から概算の所得税(源泉徴収税額)が天引きされています。しかし、この時点では正確な年間の所得税額は分かりません。
そこで行うのが「年末調整」です。年末調整は、会社が従業員の1年間の正確な収入や、生命保険料控除、地震保険料控除、扶養控除、配偶者控除などの所得控除を計算し、納めすぎている税金があれば還付したり、足りなければ追加で徴収したりする手続きです。
これにより、ほとんどの会社員は改めて確定申告をしなくても、正確な所得税額で納税を終えることができます。年末調整で会社に提出を求められる書類は、これらの控除を受けるために必要な情報を提供するためのものです。
控除を活用するためにできること
会社が行う年末調整である程度の控除は適用されますが、自分で手続きをしないと受けられない控除もあります。
例えば、医療費控除や、住宅ローン控除の初年度、ふるさと納税の寄付金控除の一部(ワンストップ特例を利用しない場合)などは、自分で確定申告をすることで控除を受けることができます。
生命保険料控除や地震保険料控除を受けるためには、年末調整の際に会社から配布される書類に記入し、保険会社から届く証明書を添付して提出する必要があります。
これらの手続きを行うことで、納めすぎた税金が還付される可能性があります。ご自身に関係する控除がないか、確認してみる価値は十分にあるでしょう。
まとめ:税金を知ることはお金を守ること
税金の仕組みは複雑に感じられますが、基本的な「所得」に税金がかかり、「所得控除」によって税金が安くなるという仕組みを知っておくことは、家計を理解する上で非常に重要です。
自分がどんな控除を受けられるのかを知り、必要な手続きを行うことで、手取りを増やしたり、将来のための貯蓄や投資に回せるお金を増やしたりすることにも繋がります。
もし、「自分の場合はどうなるのだろう?」「もっと詳しく知りたい」と感じたら、税務署の相談窓口を利用したり、税理士などの専門家に相談したりすることも選択肢の一つです。
税金について正しく理解し、かしこくお金を守っていきましょう。