iDeCoとNISAの税金メリットとは?【初心者向け】
老後資金の準備や資産形成の方法として、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)という言葉を聞く機会が増えたのではないでしょうか。これらは国が用意した制度で、「税金面で優遇される」ことが大きな特長です。
でも、「税金が優遇されるって具体的にどういうこと?」「難しそう」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、iDeCoとNISAを活用する上で特に知っておきたい税金に関するメリットについて、初心者の方にも分かりやすいように丁寧にご説明します。税金メリットを理解することで、これらの制度がお金に対する漠然とした不安を和らげ、将来のために資産を育てる助けになる理由が見えてくるでしょう。
iDeCo(イデコ)の税金メリットを理解しよう
iDeCoは、自分で掛け金を出して、自分で選んだ金融商品で運用し、原則60歳以降に受け取る私的年金制度です。この制度には、主に3つの段階で税金メリットがあります。
メリット1:掛け金が全額所得控除になる
iDeCoに支払った掛け金は、その全額が「所得控除」の対象になります。所得控除とは、税金(所得税や住民税)を計算するもととなる「所得」から、特定の金額を差し引ける仕組みのことです。
所得が少なく計算されれば、その分、税金の額も安くなります。つまり、iDeCoの掛け金分、納める税金を減らすことができるということです。
例えば、毎月2万円(年間24万円)をiDeCoに掛けたとします。年収によって減る税金の額は異なりますが、仮に所得税率が10%、住民税率が10%だとすると、年間で約4.8万円(24万円 × 税率20%)の税金が安くなる可能性があります。これは大きなメリットと言えるでしょう。
この所得控除を受けるためには、年末調整や確定申告の手続きが必要になります。
メリット2:運用益が非課税になる
通常、投資信託などの金融商品で利益が出たり、配当金を受け取ったりすると、その利益に対して約20%の税金がかかります。例えば、1万円の利益が出たら、約2,000円が税金として引かれてしまうのです。
しかし、iDeCoの口座内で運用して得られた利益(売却益や配当・分配金など)には、税金が一切かかりません。
運用期間が長くなればなるほど、この「非課税」の恩恵は大きくなります。税金として引かれる分が手元に残るため、その分を再び運用に回すことで、さらに効率的に資産を増やしていく「複利効果」も期待できます。
メリット3:受け取り時にも税制優遇がある
積み立てて運用した資産を60歳以降に受け取る際にも、税金面の優遇があります。
受け取り方には「一時金としてまとめて受け取る」方法と「年金として分割して受け取る」方法があり、それぞれに税制優遇が適用されます。
- 一時金として受け取る場合:「退職所得控除」が適用される場合があります。長年勤務した会社から退職金を受け取る際にかかる税金を計算するときに使える控除と同じようなものです。勤続年数(iDeCoの加入期間等)に応じて一定額まで税金がかからない仕組みがあります。
- 年金として受け取る場合:「公的年金等控除」が適用される場合があります。公的年金(国民年金や厚生年金)を受け取る際にかかる税金を計算するときに使える控除と同じようなものです。年齢や年金額に応じて一定額まで税金がかからない仕組みがあります。
これらの控除を利用することで、受け取る金額に対してかかる税金を抑えることができます。
NISA(ニーサ)の税金メリットを理解しよう
NISAもiDeCoと同様に、運用益が非課税になる制度です。特に2024年から始まった新しいNISAは、制度が拡充され、より使いやすくなりました。
新しいNISAには、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠があり、年間で投資できる金額(非課税投資枠)と、非課税で運用できる期間の上限が設定されています。
NISAの税金メリット:運用益が非課税になる
iDeCoのメリット2と同じく、NISAの最大のメリットは、NISA口座内で投資した金融商品から得られた運用益(売却益、配当金、分配金)が非課税になることです。
通常の投資であれば約20%の税金がかかるところ、NISA口座であれば税金がかかりません。これにより、手元に残る利益が増え、資産を効率的に育てることが期待できます。
新しいNISAでは、この非課税で運用できる期間が無期限化されました。一度設定した非課税投資枠(生涯にわたり1,800万円まで)の範囲内であれば、売却して枠が空けば再び投資することも可能です。
iDeCoとNISA、税金メリットの違いは?
iDeCoとNISAの共通点は「運用益が非課税になる」ことですが、税金メリットの点ではいくつか違いがあります。
- 掛け金の所得控除: iDeCoにはありますが、NISAにはありません。これはiDeCoの大きな特長です。
- 運用できる金額・期間: それぞれ年間や生涯での非課税投資枠、非課税期間などが異なります(新しいNISAは非課税期間無期限化)。
- 受け取り時の税制優遇: iDeCoは原則60歳まで引き出せない代わりに、受け取り時にも税制優遇があります。NISAはいつでも引き出せますが、受け取り時の税制優遇はありません(運用益非課税のメリットは運用期間中に享受済み)。
どちらの制度にも魅力的な税金メリットがありますが、掛け金が所得控除になるiDeCoは、毎年の税負担を軽減しながら老後資金を準備したい方に特にメリットが大きいと言えるでしょう。一方、NISAは非課税期間が無期限でいつでも引き出し可能なため、より柔軟に資産運用を行いたい方に向いています。
税金メリットを受ける上での注意点
iDeCoもNISAも、税金メリットを受けるためにはいくつか注意点があります。
- 非課税投資枠の上限: それぞれ年間や生涯で非課税で投資できる金額には上限があります。
- iDeCoの引き出し制限: iDeCoは原則60歳まで資産を引き出すことができません。途中で資金が必要になっても、簡単に引き出せない点は理解しておく必要があります。
- 手続き: iDeCoの所得控除を受けるには、年末調整や確定申告が必要です。NISA口座は金融機関で開設する必要があります。
まとめ
iDeCoとNISAは、どちらも国が用意した強力な「税制優遇」という武器を持つ資産形成・資産運用のための制度です。
- iDeCo: 掛け金の所得控除、運用益の非課税、受け取り時の税制優遇、という3段階のメリットがあります。老後資金準備に特化しており、原則60歳まで引き出せません。
- NISA: 運用益が非課税になるメリットがあり、新しいNISAでは非課税期間が無期限になりました。iDeCoよりも柔軟に利用できますが、掛け金の所得控除はありません。
これらの税金メリットを理解することは、iDeCoやNISAを始めるかどうかの判断や、どのように活用するかの検討において非常に重要です。ご自身の現在の状況や将来の目標に合わせて、どちらの制度がより適しているか、あるいは両方活用するのかを考えてみる価値は大きいでしょう。
もし、ご自身の状況に合わせて具体的にどう考えれば良いか迷う場合は、金融機関の窓口や、お金に関する専門家(ファイナンシャル・プランナーなど)に相談してみるのも良いでしょう。この記事が、あなたの資産形成について考える一歩となれば幸いです。