【初心者向け】あなたに必要な老後資金はいくら?目標額の考え方と簡単な計算方法
老後資金について、「いくら必要なのだろうか」「今のままで大丈夫だろうか」と、漠然とした不安を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。定年後の生活を安心して送るためには、まずは「自分にはいくら必要なのか」を知ることが大切です。
この記事では、あなたに必要な老後資金の目標額を考えるための基本的な考え方と、簡単な計算方法を分かりやすく解説します。
なぜ老後資金の目標額を知ることが大切なのか?
老後資金の目標額を設定することは、漠然とした不安を解消し、具体的な行動を起こすための重要な第一歩です。
- 不安の「見える化」: いくら不足する可能性があるのかを知ることで、漠然とした不安が具体的な数字になり、向き合いやすくなります。
- 計画的な準備: 目標額が分かれば、「いつまでに、いくらを、どうやって準備するか」という計画を立てやすくなります。
- 効果的な対策: 現在の資産状況と目標額との差が明確になり、貯蓄を増やす、運用を始める、支出を見直すなど、具体的な対策を検討できます。
まるで、旅行に行くときに「旅費はいくらくらいかかりそうか」を見積もるのと同じように、老後の生活に必要な資金を見積もることで、安心して準備を進めることができます。
老後資金の目標額を決めるための基本的な考え方
老後資金の目標額を考える際には、主に以下の3つの要素を考慮します。
- 老後の収入: 主に公的年金(国民年金や厚生年金)が中心となりますが、その他に企業年金や退職金、iDeCo(個人型確定拠出年金)やつみたてNISAなどの運用資産からの収入、貯蓄の取り崩しなども含まれます。
- 老後の支出: 生活費(食費、光熱費、通信費など)はもちろん、医療費、介護費、趣味や旅行などの費用も考慮する必要があります。現在の生活費をベースに考えるのが一般的ですが、ライフスタイルの変化によって増減する可能性もあります。
- 老後の期間: 何歳まで生きるかを想定します。平均寿命はもちろん、健康寿命や、それよりも長く生きる可能性(長生きリスク)も考慮すると良いでしょう。
これらの要素から、「老後の総収入」と「老後の総支出」を計算し、その差額が、公的年金等では賄いきれない「自分で準備しておくべき金額=目標額」となります。
老後資金目標額の簡単な計算方法
では、具体的に老後資金の目標額を計算する手順を見ていきましょう。ここでは、公的年金以外の収入を貯蓄や運用資産の取り崩しで賄う場合の、最も基本的な考え方に基づいた計算方法をご紹介します。
ステップ1:公的年金の受給見込額を確認する
まず、将来いくらの年金が受け取れる見込みかを確認しましょう。
- ねんきん定期便: 毎年誕生月に送られてくるハガキや封書で、これまでの加入実績に応じた年金額が確認できます。50歳以上の方には、より実際の受給額に近い見込額が記載されています。
- ねんきんネット: 日本年金機構のウェブサイト「ねんきんネット」に登録すれば、いつでもご自身の年金情報を確認したり、将来の年金額を試算したりできます。
例えば、65歳から年間200万円の公的年金を受け取れる見込みと仮定します。
ステップ2:老後の年間支出を想定する
次に、老後、年間いくらのお金が必要になるかを想定します。現在の家計簿や支出の記録を参考にすると良いでしょう。
- 総務省の家計調査などでは、高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの世帯)の平均的な実支出は約26万円/月(年間約312万円)程度とされています。これはあくまで平均であり、個々のライフスタイルによって大きく異なります。
- 現在の生活費に加え、医療費、介護費、レジャーや趣味にかかる費用なども考慮しましょう。
- 物価上昇(インフレ)の可能性も頭の片隅に置いておくと、より現実的な金額になります。
仮に、ゆとりある生活を送るために、年間360万円(月30万円)が必要と想定します。
ステップ3:不足する年間の金額を計算する
年間の支出想定額から、公的年金の年間受給見込額を差し引いて、毎年不足する金額を計算します。
年間不足額 = 年間支出想定額 − 公的年金年間受給見込額
例:年間360万円(支出) − 年間200万円(年金) = 年間160万円(不足額)
ステップ4:老後の期間を想定する
何歳までを老後期間として想定するかを決めます。例えば、65歳から90歳までの25年間と想定します。
ステップ5:目標不足額(準備すべき金額)を計算する
ステップ3で計算した年間の不足額に、ステップ4で想定した老後の期間を掛け合わせます。
目標不足額 = 年間不足額 × 老後期間
例:年間160万円 × 25年間 = 4,000万円
この4,000万円が、公的年金だけでは賄いきれない、ご自身で準備しておく必要がある金額の目安となります。
計算した目標額に向けた準備の選択肢
ここで計算した目標額は、あくまで公的年金以外の収入を「貯蓄の取り崩し」で賄うと仮定した場合の目安です。実際には、退職金や企業年金がある方、iDeCoやつみたてNISAなどで運用している資産がある方など、状況は人それぞれです。
目標額を知ることで、現在の資産状況と比較し、不足分をどう補っていくかを考えることができます。
- 毎月の貯蓄額を増やす
- iDeCoやつみたてNISAなど、税制優遇のある制度を活用して資産運用を始める
- 退職までの期間で、現在の支出を見直して節約する
- 定年後も働く期間を設ける
など、様々な選択肢を検討し、ご自身の状況に合った準備を進めることが大切です。
まとめ:まずは知ることから始めましょう
老後資金の目標額を計算することは、少し大変に感じるかもしれません。しかし、「いくら必要なのか」を知ることは、闇雲に不安を抱えるのではなく、具体的な一歩を踏み出すための確かな道しるべとなります。
今回ご紹介した計算方法はあくまでシンプルなものです。より詳細に考えるためには、退職金の金額、企業年金の有無、持ち家か賃貸か、介護が必要になった場合の費用、インフレの影響などを考慮する必要があります。
しかし、まずは大まかな金額を知ることから始めてみましょう。一度計算してみることで、現在の準備状況と照らし合わせ、今後何をすべきかが見えてくるはずです。
老後資金の準備は長期にわたるものです。焦る必要はありません。まずは目標額を知り、小さくても今日からできることから始めてみてはいかがでしょうか。そして、計算した目標額は一度きりではなく、ライフプランや社会情勢の変化に合わせて定期的に見直していくことをお勧めします。