【初心者向け】企業型確定拠出年金(DC)とは? iDeCoとの違いや仕組みを解説
会社の年金制度、きちんと理解していますか?企業型DCの基本
定年後の生活資金や資産形成について考える際、公的な年金制度(国民年金や厚生年金)に加えて、企業が提供する年金制度があることをご存知でしょうか。その一つに「企業型確定拠出年金(きぎょうがたかくていきょしゅつねんきん)」、略して「企業型DC」と呼ばれる制度があります。
「なんとなく聞いたことはあるけれど、仕組みがよく分からない」「個人で入るiDeCo(イデコ)とどう違うの?」と感じている方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、企業型DCの基本的な仕組みから、老後資金準備に役立つ理由、そしてiDeCoとの違いまでを分かりやすく解説します。ご自身の会社の制度を確認し、老後資金準備にどう活かせるのかを知るきっかけにしていただければ幸いです。
企業型確定拠出年金(DC)とは?仕組みを理解しよう
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、会社が従業員のために掛金(かけきん)を積み立て、従業員自身がそのお金を運用して、将来受け取る年金(または一時金)の額が決まる制度です。
1. 会社が掛金を負担する
原則として、掛金は会社が負担します。毎月一定額が、加入者である従業員のために積み立てられます。掛金の額は、会社の規約によって決められています。
2. 加入者(従業員)が運用方法を選ぶ
積み立てられた掛金は、会社の規約で定められた金融商品(投資信託、預貯金、保険など)の中から、加入者自身がどれに投資するかを選び、運用を行います。運用成果によって、将来受け取れる金額が増えたり減ったりします。
「確定拠出」とは? この「確定拠出」という言葉は、「将来受け取る金額(給付)が確定しているのではなく、積み立てる掛金(拠出)の額が確定している」という意味です。将来いくらになるかは、ご自身の運用次第ということです。
3. 原則60歳以降に受け取り
積み立てられたお金は、原則として60歳になるまで引き出すことができません。これは、老後資金を確保するための制度であるためです。60歳以降、運用期間が10年以上であれば年金として分割で受け取るか、一時金としてまとめて受け取るかなどを選択できます。
マッチング拠出とは?
会社の規約によっては、「マッチング拠出」という仕組みを利用できる場合があります。これは、会社が拠出する掛金に加えて、加入者自身も掛金を上乗せして拠出できる仕組みです。自分で拠出した掛金についても、税制優遇を受けることができます。ただし、加入者拠出額には上限があります。
企業型DCを活用するメリット・デメリット
企業型DCは、老後資金準備に大変有効な制度ですが、知っておくべきメリットとデメリットがあります。
メリット:税金面で大きな優遇がある
企業型DCの最大のメリットは、税制優遇です。
- 掛金が非課税: 会社が拠出した掛金は、従業員の給与として扱われないため、所得税や住民税の計算対象になりません。マッチング拠出でご自身が拠出した掛金も、全額が所得控除の対象となり、税金が軽減されます。
- 運用益が非課税: 運用によって得られた利益(利子や分配金、売却益など)に通常かかる税金(約20%)が非課税になります。これは、長く運用するほど大きなメリットとなります。
- 受け取り時にも税制優遇: 原則60歳以降に受け取る際も、年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」という税金の優遇措置が受けられます。
デメリット:元本割れのリスクと流動性の制限
一方で、注意すべき点もあります。
- 運用状況によっては元本割れのリスク: 運用成果によって受け取る金額が決まるため、運用がうまくいかなかった場合は、積み立てた掛金の合計額を下回る(元本割れする)可能性があります。
- 原則60歳まで引き出せない: 急な資金が必要になっても、原則として60歳になるまで引き出すことはできません。
- 運用管理が必要: 自分で運用方法を選ぶ必要があります。どの金融商品に投資するかを考え、必要に応じて見直しを行う必要があります。
iDeCo(個人型確定拠出年金)との違いは何?
企業型確定拠出年金(企業型DC)と名前が似ている制度に、iDeCo(個人型確定拠出年金)があります。どちらも確定拠出年金制度ですが、いくつかの違いがあります。
| 項目 | 企業型確定拠出年金(企業型DC) | iDeCo(個人型確定拠出年金) |
| :----------- | :------------------------------------------------ | :----------------------------------------------- |
| 加入主体 | 企業(会社が導入) | 個人 |
| 掛金の拠出 | 原則、会社が拠出(規約によりマッチング拠出も可能) | 加入者自身が拠出 |
| 掛金の上限 | 企業型DCのみの場合、月額5.5万円
(他の年金制度の状況で変動) | 職業や他の年金制度の状況で変動(例: 会社員は月額2.3万円が多い) |
| 手数料 | 原則、会社が負担(一部加入者負担の場合もあり) | 原則、加入者が負担 |
| 運用の選択肢 | 会社の規約で定められた商品の中から選択 | 運営管理機関(金融機関)によって異なる |
| iDeCoとの併用 | 会社の規約で認められていれば可能 | 企業型DCに加入していても可能な場合がある |
重要なポイント:iDeCoと併用できるか?
以前は、企業型DCに加入している会社員はiDeCoに加入できないケースが多くありました。しかし、法改正により、会社の規約で認められていれば、企業型DCに加入しながらiDeCoにも加入できるようになりました。ただし、企業型DCとiDeCoの掛金の合計には上限が設けられています。
ご自身がiDeCoに加入できるかどうか、またiDeCoの掛金上限額は、会社の企業型DC規約やご自身の状況によって異なりますので、会社の担当部署や、企業型DCの運営管理機関に確認することをおすすめします。
まとめ:企業型DCは老後資金準備の強い味方
企業型確定拠出年金(企業型DC)は、会社が提供する大変有利な老後資金準備制度です。掛金が非課税になるなど、税制優遇のメリットを最大限に活かすことができます。
まずは、ご自身の会社に企業型DCがあるのか、ある場合はどのような仕組みになっているのか(掛金の額、マッチング拠出の有無、運用できる金融商品など)を確認することから始めましょう。
そして、提供されている金融商品の中から、ご自身の目標やリスクの考え方に合ったものを選んで運用することが大切です。必要であれば、個人で加入できるiDeCoも併せて活用することで、より手厚い老後資金準備が可能になります。
分からないことがあれば、会社の担当部署や、企業型DCの運営管理機関に相談してみるのも良いでしょう。老後資金準備に向けて、第一歩を踏み出していただければと思います。