【初心者向け】退職後の健康保険 迷わないための基本と手続き
退職後の健康保険、どうすればいいの?
会社員として働いている間は、健康保険組合や協会けんぽといった健康保険に加入している方がほとんどかと思います。しかし、会社を退職すると、その会社の健康保険からは脱退することになります。
退職後も、病気や怪我をしたときのために健康保険は必要です。では、退職後はどのような選択肢があるのでしょうか。そして、どのように手続きをすれば良いのでしょうか。
この記事では、退職後に加入できる健康保険の種類と、それぞれの仕組み、手続きについて、初心者の方にも分かりやすくご説明します。これを読めば、ご自身にとって最適な健康保険を選ぶためのヒントが得られるでしょう。
退職後の健康保険 3つの選択肢
会社を退職した方が加入できる健康保険には、主に以下の3つの選択肢があります。
- 任意継続被保険者になる:これまで加入していた会社の健康保険を、一定期間継続する方法です。
- 国民健康保険に加入する:お住まいの市区町村が運営する健康保険です。
- ご家族の健康保険の扶養に入る:配偶者やお子さんなど、ご家族が加入している健康保険の被扶養者となる方法です。
ご自身の状況に合わせて、これらの選択肢の中から一つを選ぶことになります。それぞれの仕組みを詳しく見ていきましょう。
選択肢1:任意継続被保険者とは
任意継続被保険者とは、会社を退職した後も、退職前に加入していた健康保険(健康保険組合または協会けんぽ)に引き続き加入することを希望し、一定の条件を満たした場合に認められる制度です。
任意継続の加入条件
- 退職日までに、継続して2ヶ月以上被保険者期間があること。
- 退職日の翌日から20日以内に、加入していた健康保険組合または協会けんぽに申請すること。
任意継続のメリット・デメリット
- メリット:
- 退職前と同じ給付内容が受けられます(傷病手当金や出産手当金などは、資格喪失後の継続給付の条件を満たせば受け取れる場合があります)。
- ご家族を被扶養者として加入させられる場合があります(条件を満たせば、保険料は変わりません)。
- 保険料の計算のもととなる標準報酬月額には上限があるため、退職時の給与が高い場合は、国民健康保険よりも保険料が安くなる可能性があります。
- デメリット:
- これまで会社が半分負担してくれていた保険料の全額を自己負担する必要があります。
- 加入できる期間は最長2年間と決められています。
- 原則として、途中で脱退することはできません(保険料の未納など、やむを得ない理由がある場合を除く)。
任意継続の保険料
保険料は、退職時の標準報酬月額(おおよその月収)に基づいて計算されます。ただし、保険料計算の対象となる標準報酬月額には上限が設定されています。具体的な保険料額は、加入していた健康保険組合や協会けんぽにお問い合わせください。
選択肢2:国民健康保険とは
国民健康保険は、お住まいの市区町村が運営する健康保険で、会社の健康保険などに加入していない方が加入します。
国民健康保険の加入対象者
日本国内に住所がある方で、以下の健康保険に加入していない方が対象です。
- 会社の健康保険(健康保険組合、協会けんぽなど)
- 船員保険
- 共済組合
- 後期高齢者医療制度
- 生活保護を受けている方
退職後は、任意継続を選ばない場合、原則として国民健康保険に加入することになります。
国民健康保険のメリット・デメリット
- メリット:
- 特別な条件はなく、日本に住んでいる方であれば誰でも加入できます。
- 保険料には、所得が低い方に対する減免制度が用意されている場合があります。
- 家族構成や所得状況に変化があった場合、保険料が見直されます。
- デメリット:
- 傷病手当金や出産手当金といった給付はありません(自治体独自の給付がある場合を除く)。
- 保険料は、前年の所得や世帯の人数、お住まいの市区町村によって大きく異なります。退職時の給与が高い場合、任意継続よりも保険料が高くなる可能性があります。
- 世帯ごとに保険料を支払うため、ご家族が多い場合は保険料が高くなる傾向があります。
国民健康保険の保険料
保険料は、前年の所得、加入する方の人数、年齢、そしてお住まいの市区町村によって計算方法が異なります。退職した年の保険料は、前年の所得に基づいて計算されるため、退職してもすぐに保険料が安くなるわけではありません。正確な保険料額は、お住まいの市区町村役場の国民健康保険担当窓口にお問い合わせください。
選択肢3:ご家族の扶養に入る
配偶者やお子さんが会社の健康保険に加入している場合、一定の条件を満たせば、そのご家族の被扶養者として健康保険に加入することができます。
扶養に入るための主な条件
- 扶養する方(被保険者)の収入によって生計を維持されていること。
- 退職後の年間収入の見込みが130万円未満であること(60歳以上の方や障害のある方は180万円未満)。
- 扶養する方の年収の2分の1未満であることなど、健康保険組合や協会けんぽによって細かい条件が定められています。
扶養に入るメリット・デメリット
- メリット:
- ご自身の保険料負担はありません。扶養する方の保険料も変わりません。
- デメリット:
- 収入制限など、厳しい条件を満たす必要があります。
- 傷病手当金や出産手当金といった給付はありません。
どの健康保険を選べば良いか?
退職後の健康保険を選ぶ際は、以下の点を比較検討すると良いでしょう。
- 保険料の比較:任意継続と国民健康保険の保険料を試算してもらい、比較することが最も重要です。特に、退職時の給与が高かった方は、任意継続の上限保険料と国民健康保険料を比較してみてください。
- ご家族の状況:扶養に入れるご家族がいるか、ご家族も一緒に加入させるか、といった状況も考慮が必要です。
- 受けたい給付:傷病手当金や出産手当金といった給付が必要かどうかも判断材料になります。
手続きの流れ:
- 情報収集と比較検討:
- 加入していた健康保険組合または協会けんぽに、任意継続した場合の保険料を問い合わせます。
- お住まいの市区町村役場の国民健康保険担当窓口に、国民健康保険に加入した場合の保険料を問い合わせます。
- ご家族の扶養に入れる場合は、ご家族の勤務先の健康保険担当窓口に条件を確認します。
- 選択決定:比較検討した結果、どの健康保険に加入するかを決めます。
- 手続き:
- 任意継続の場合:退職日の翌日から20日以内に、加入していた健康保険組合または協会けんぽに申請書を提出します。
- 国民健康保険の場合:退職日の翌日から14日以内に、お住まいの市区町村役場の国民健康保険担当窓口に届け出を行います。手続きには、健康保険資格喪失証明書(会社から受け取ります)や本人確認書類、マイナンバーに関する書類などが必要です。
- ご家族の扶養に入る場合:扶養するご家族の勤務先を通じて、健康保険組合または協会けんぽに被扶養者となる手続きを行います。
まとめ
会社を退職した後の健康保険には、「任意継続」「国民健康保険」「ご家族の扶養に入る」という主な選択肢があります。それぞれ保険料の計算方法や受けられる給付、加入期間などが異なります。
ご自身やご家族の状況に合わせて、どの健康保険が最も適しているかを判断するためには、それぞれの保険料を試算し、給付内容なども比較検討することが大切です。特に、任意継続には申請期間の期限がありますので、退職が決まったら早めに情報収集を始めることをお勧めします。
ご不明な点は、加入していた健康保険組合・協会けんぽ、もしくはお住まいの市区町村役場の国民健康保険担当窓口に遠慮なく問い合わせてみてください。