【初心者向け】資産運用で聞く「リターン」とは? 目標達成のための考え方
はじめに
将来の生活資金や資産形成について考え始めたとき、「資産運用」という言葉を耳にする機会があるかもしれません。そして、資産運用について調べ始めると、「リターン」や「利回り」といった言葉が出てきて、少し難しく感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
これらの言葉は、資産運用でどれくらいの成果が見込めるのか、あるいはこれまでどれくらいの成果が出ているのかを示す、非常に大切な指標です。しかし、その意味を正確に理解していないと、「なんとなくすごそう」「危険そう」といった漠然としたイメージだけで判断してしまいかねません。
この記事では、資産運用における「リターン」や「利回り」が何を意味するのか、そして、それらの考え方をどのようにご自身の資産形成の目標達成に役立てていけば良いのかを、初心者の方にも分かりやすく解説します。
資産運用における「リターン」とは?
「リターン(Return)」とは、一言でいうと「資産運用によって得られる収益」のことです。投資したお金が、運用によってどれだけ増えたかを示します。
リターンには、主に次のようなものがあります。
- 値上がり益(キャピタルゲイン): 投資した資産(株や投資信託など)の価格が上昇し、売却することによって得られる利益です。
- 配当金や分配金(インカムゲイン): 株式を保有することで得られる配当金や、投資信託を保有することで得られる分配金など、資産そのものから定期的に(あるいは不定期に)生み出される収益です。
これらの合計が、運用によって得られる全体のリターンとなります。
例えば、100万円を投資して、1年後にそれが105万円になった場合、得られたリターンは5万円です。
リターンを測る大切な指標「利回り」とは?
リターンは得られた収益そのものですが、投資の効率性や他の運用方法と比較する際には、「利回り」という指標がよく用いられます。
「利回り(Yield)」とは、投資した元本に対して、1年間でどれくらいの収益が得られたかをパーセンテージで示したものです。通常、利回りを見る際には、受け取った収益だけでなく、売買によって生じた損益や、購入・売却にかかる手数料なども含めて計算することが一般的です。(ただし、表示されている利回りの定義は商品によって異なる場合もあるため、注意が必要です。)
先の例で考えてみましょう。 100万円を投資して、1年後に5万円のリターンを得た場合の利回りは、次のように計算できます。
- 利回り = (年間収益額 ÷ 投資元本) × 100
- この例の場合: (5万円 ÷ 100万円) × 100 = 5%
つまり、この運用の利回りは5%ということになります。同じ5万円のリターンでも、投資元本が50万円であれば利回りは10%になりますし、200万円であれば利回りは2.5%になります。このように、利回りを見れば、投資額に対してどれだけ効率よく収益を上げられたかが分かります。
リターン(利回り)とリスクの関係
資産運用を考える上で、「リターン」とセットで必ず考慮しなければならないのが「リスク」です。
一般的に、より高いリターンを目指すには、より高いリスクを受け入れる必要があると言われます。リスクとは、「将来得られるリターンが不確実であること」、つまり収益が期待通りにならない可能性や、元本を割り込んでしまう可能性(価格変動の幅)を指します。
- リスクが低いとされるもの: 預貯金や個人向け国債などは、元本割れのリスクが非常に低いですが、その分、期待できるリターン(利回り)も低くなります。
- リスクが高いとされるもの: 株式や特定の投資信託などは、価格変動が大きく、場合によっては元本を大きく割り込む可能性もありますが、その分、高いリターンが期待できる可能性もあります。
必ずしも「リスクが高い=儲かる」わけではありませんし、「リスクが低い=絶対に損をしない」わけでもありません。ご自身の許容できるリスクの範囲で、目標とするリターンが見込める運用方法を選ぶことが重要です。ご自身の「リスク許容度」については、別途確認してみることをお勧めします。
目標達成のためにリターン(利回り)をどう考えるか
ご自身の資産形成の目標額(例えば、定年までに〇〇万円の老後資金を用意したい)がある場合、その目標達成に向けて、どの程度のリターンが必要になるのかを考えてみることが役立ちます。
例えば、現在50歳の方が、10年後の60歳までにあと500万円を資産運用で増やしたいと考えたとします。現在手元に運用できる資金が500万円あり、今後追加で積み立てられる金額はないと仮定します。この場合、10年で500万円を500万円に増やす、つまり資産を倍にする必要があります。これは、単純計算で年間約7.2%の利回りが必要になります。(これは複利を考慮した概算です。実際には税金や手数料も考慮が必要です。)
年間7.2%の利回りは、リスクが比較的高いとされる運用方法でなければ目指すのが難しい水準かもしれません。もし年間3%の利回りであれば、10年後の資産は約672万円にしかなりません。目標達成が難しいと分かれば、目標額を見直すか、追加の積み立てを行うか、もう少しリスクをとって高めの利回りを目指すかなど、次の行動を検討できます。
ただし、ここで重要なのは、必要な利回りを計算したからといって、必ずその通りのリターンが得られるわけではないということです。過去のデータや専門家の予測はあくまで参考であり、将来の成果は保証されません。
リターンを考える上での注意点
- 将来は不確実: 過去の運用実績が高いからといって、将来も必ず同じリターンが得られるわけではありません。常に変動するものであることを理解しておきましょう。
- 複利の効果: 運用によって得られたリターンを再び投資に回すことで、雪だるま式に資産が増えていく効果を「複利」と言います。特に長期の資産運用では、この複利効果が大きな差を生み出します。目標達成に必要なリターンを考える際にも、複利の仕組みを理解しておくと良いでしょう。
- 手数料や税金: 運用によって得られたリターンに対しては、手数料がかかったり、税金が課されたりします。実際に手元に残る金額を考える際には、これらも考慮する必要があります。NISAやつみたて投資枠のように、特定の税金が非課税になる制度を活用することも重要です。
まとめ
「リターン」とは資産運用で得られる収益であり、「利回り」はそれを投資元本に対する年間の割合で示したものです。これらは、運用効率を測り、目標達成に向けた計画を立てる上で重要な指標となります。
しかし、リターンには常に「リスク」が伴い、一般的には高いリターンを目指すほどリスクも高まります。ご自身の資産形成の目標額と、許容できるリスクのバランスを考えながら、現実的なリターン目標を設定することが大切です。
これから資産運用を始める方、あるいは既に行っている方も、ご自身の運用状況を見る際には、リターンや利回りの意味を理解し、将来の目標に向けてしっかりと計画を立てていくようにしましょう。不確実な将来に向けて、無理のない範囲で計画的に資産形成を進めていくことが、漠然としたお金の不安を解消するための第一歩となります。