【初心者向け】資産がお金を生む仕組み 配当金・分配金の基本ガイド
定年後の生活や将来への漠然としたお金の不安を感じていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。貯蓄だけでなく、今ある資産に働いてもらって、将来の生活費を補ったり、資産をさらに増やしたりしたいとお考えになることもあるかと思います。
資産に働いてもらう方法の一つに、「インカムゲイン」というものがあります。インカムゲインとは、資産を保有していることで定期的に得られる収入のことです。預貯金の利子や不動産の家賃収入などがこれにあたりますが、株式の「配当金」や投資信託の「分配金」も代表的なインカムゲインです。
この記事では、資産がお金を生む仕組みである配当金と分配金について、初心者の方にも分かりやすく基本的な内容をご説明します。
配当金・分配金とは?
「配当金」と「分配金」は、どちらも資産を保有していることで得られるお金ですが、それぞれ性質が少し異なります。
- 配当金(主に株式) 企業が事業活動で得た利益の一部を、株主に還元するものです。企業の業績が好調であれば配当が増える可能性があり、逆に業績が悪化すれば減配(配当が減ること)や無配(配当が出ないこと)となるリスクもあります。一般的に、年に1~2回支払われることが多いですが、企業によって異なります。
- 分配金(主に投資信託) 投資信託の運用によって得られた収益(株式の配当、債券の利息、株式や債券の売買益など)を、投資家に還元するものです。分配金は投資信託の種類によって、毎月、隔月、年1回など支払頻度が異なります。
配当金はあくまで企業の「利益の分配」ですが、投資信託の分配金は運用で得た様々な種類の収益から支払われるという違いがあります。
なぜ配当金・分配金が注目されるのか
配当金や分配金は、主に以下のような理由で注目されることがあります。
- 定期的な収入が得られる可能性 資産を保有しているだけで定期的にお金が入ってくるため、生活費の補填やちょっとした贅沢に充てるといった使い方が考えられます。特にリタイア後の生活資金の足しにしたいと考える方にとって、魅力的な収入源となり得ます。
- 再投資による資産増加の可能性 受け取った配当金や分配金を再び同じ資産や別の資産に投資することで、雪だるま式に資産を増やしていく「複利効果」が期待できます。
- 株価や基準価額の値上がり益(キャピタルゲイン)以外の収益 資産運用には、購入時より値上がりした際に売却して得る利益(キャピタルゲイン)もありますが、配当金や分配金は、価格変動に関わらず保有し続けることで得られる収益です。これにより、市場の値動きに一喜一憂することなく、安定した収益を目指すという考え方もできます。
株式の配当金についてもう少し詳しく
株式の配当金は、その企業の利益状況によって金額が変動します。安定した利益を上げている企業ほど、比較的安定した配当を続ける傾向がありますが、景気や企業の業績によっては、突然減配や無配になることもあります。
配当金は、保有している株式数に応じて支払われます。例えば、1株あたり年間10円の配当を出す企業の株を100株持っていれば、年間1,000円の配当金を受け取ることができます(税金は考慮していません)。
企業を選ぶ際には、過去の配当実績や今後の配当方針などを確認することも、一つの判断材料になります。
投資信託の分配金についてもう少し詳しく
投資信託の分配金には、注意しておきたい点があります。それは、分配金が支払われる原資が、運用で得た収益だけでなく、投資家が投資した元本の一部である場合があるということです。
投資信託の分配金には主に以下の2種類があります。
- 普通分配金: 運用によって得られた収益(値上がり益や利息、配当など)を原資とする分配金です。これは、投資家が受け取る利益にあたります。
- 元本払い戻し型分配金(特別分配金): 運用収益を上回る分配を行う場合に、投資家が投資した元本の一部を取り崩して支払われる分配金です。これは、投資家が受け取る利益ではなく、自分のお金が戻ってきただけです。特別分配金が多く出ている投資信託は、見た目の利回りが高く見えても、実は資産が減っている可能性があるため注意が必要です。
初心者の方は、特に「特別分配金」の仕組みを理解しておくことが大切です。分配金が高いからといって安易に飛びつくのではなく、その投資信託がどのような方針で分配金を出しているのか、分配金の原資がどうなっているのかを確認することが重要です。
配当金・分配金の注意点
配当金や分配金は魅力的な収入源となり得ますが、いくつか注意しておきたい点があります。
- 価格変動リスク: 配当金や分配金を目当てに資産を保有していても、市場の状況によってはその資産自体の価格が下がり、元本割れを起こす可能性があります。受け取った配当金・分配金以上の損失が出てしまうことも考えられます。
- 減配・無配リスク: 企業の業績悪化や運用状況の悪化などにより、配当金や分配金の金額が減ったり、支払われなくなったりする可能性があります。安定した収入を期待していると、計画が狂うことも考えられます。
- 税金: 受け取った配当金や分配金には、原則として税金がかかります(NISA口座など、非課税制度を利用している場合は非課税となる場合があります)。税金が差し引かれた後の金額が、実際に手元に入る金額となります。投資信託の特別分配金は非課税ですが、それは利益ではないためです。
- 分配金が資産の成長を妨げる場合: 投資信託によっては、運用で得た収益を分配金として支払わず、すべて再投資に回すことで、より効率的に資産を増やしていくことを目指すものもあります。分配金を受け取ることは、その分資産が減るということになるため、目的に応じて分配金を出すタイプか、出さない(再投資する)タイプかを選ぶ必要があります。
まずは何から始めれば良いか
配当金や分配金による資産形成に関心を持たれたら、まずは情報収集から始めてみましょう。
- 書籍や信頼できるウェブサイトで、配当や分配金に関する基本的な知識をさらに深める。
- 証券会社のウェブサイトなどで、実際に配当を出している企業や分配金を出している投資信託について調べる。(ただし、過去の実績が将来を保証するものではないことに注意が必要です。)
- NISAなどの非課税制度を活用することで、税金の負担を減らしながら効率的に運用できる可能性も検討してみる。(NISA制度については、当サイトの他の記事も参考にしてみてください。)
すぐに投資を始める必要はありません。まずは仕組みを理解し、ご自身の資産状況や将来の計画に合った方法かどうかをじっくり検討することが大切です。
まとめ
配当金や分配金は、資産を保有することで定期的な収入を得られる可能性があり、特に老後資金の形成において魅力的な考え方の一つです。
ただし、これらは元本保証されたものではなく、市場の変動や企業の業績、投資信託の運用状況によって金額が変動したり、支払われなくなったりするリスクがあります。また、投資信託の分配金には、元本を取り崩して支払われる「特別分配金」があることにも注意が必要です。
配当金や分配金による資産形成を目指すのであれば、仕組みを正しく理解し、どのようなリスクがあるのかを知った上で、ご自身の許容できる範囲で慎重に進めることが大切です。焦らず、ご自身のペースで情報を集め、検討してみてください。